静岡県浜松市の産婦人科・女性内科の専門クリニック

更年期を乗り越えるには

更年期の原因はエストロゲンの減少

写真:更年期の原因はエストロゲンの減少
Photo by LUNA・SOLE

女性は母性という素晴らしい役割を持っています。次の世代を担う卵子は18才頃に卵巣に20万個が準備され、最も優秀な卵子を排卵させながら、最高の精子との出会い待ちます。

卵子数は成熟期前半の30才ごろまでは、ゆっくりと減少しますが、成熟期後半の35才以降になると卵子は急激に減少し、37歳で約2万5千個、そして40才台には1000個台になり、閉経で0になります。
この卵子を次の世代に届けるための重要なホルモンが卵子を包み込む卵胞から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)です。
エストロゲンは女性らしさ(母性)を最高に発揮させるホルモンと言えます。エストロゲンは我が子を守る母としての体力と気力を与え、女性を魅力的にし、性交渉が上手く行えるように腟の上皮を厚くしながら、頸管粘液(中間期帯下)を増やし、精子を子宮内に導きます。

しかし、老化した卵子(遺伝子異常を起こす可能性あり)が次の世代に伝わらないように51才~52才で閉経(卵胞数を0にする)という関門を設定しています。この閉経に向かう45歳ごろからの卵胞数の急激な低下に伴い、体内のエストロゲン量も急激に低下していきます。

この閉経を中心とした前後の5年間、年齢的には45歳ぐらいから55歳ぐらいまでを更年期と呼び、エストロゲン不足から起こってくるいろいろな不快な症状を更年期障害と呼んでいます。

更年期の体の変化は?

更年期になると、不規則な排卵に伴い月経不順になり、腟の伸展性・弾力性が減少し、性交痛を感じるようになります。乳腺組織が減少し脂肪に置き換わり、乳房が縮小してきます。さらに、腰とおなかのまわりの皮下脂肪が多くなり、美しい体の線がくずれて、顔や全身の肌のはり・つやが次第に失われていきます。そして骨がもろくなって(骨粗しょう症)きます。

「老女優症候群」という言葉があります。この年代になると、美人の女優さんほど、この老いるという自然現象を受け入れることができず、人格まで否定されたように感じ、「うつ状態」になるというものです。

この時期のこのような体の変化は、すべて卵胞ホルモン(エストロゲン)の減少に伴う母性(生殖機能)の衰えで説明でき、全ての女性におこる老化現象です。

不定愁訴(いろいろな体の不調)は何故起こるの?

この年代になると、顏ののぼせ(hot flash)を中心に、めまい、肩こり、頭痛、皮膚のかゆみ、腰痛、手足の冷えなど、多くの不調に関する訴えが起こってきます。これらの症状はホルモン(エストロゲン)の減少からくる自立神経の失調症状です。

自律神経は、私たちの意思とは関係なく、自律的に働く神経で、体を活動的にさせる交感神経(アクセル役)とリラックスさせる副交感神経(ブレーキ役)からなります。
自立神経の中枢は脳の視床下部に在り、視床下部は交感神経・副交感神経の調節だけでなく、内分泌機能(ホルモン調整)も行い、体のバランスを保っています。

更年期になり卵巣からのエストロゲンの分泌が低下してくるため、視床下部はエストロゲンを増やそうと必死になって卵巣を刺激し、不安定になります。この視床下部に生じたひとつの不安定さが他の中枢機能にも影響を及ぼし、交感神経と副交感神経のバランスが悪くなり、不定愁訴が起こってくるのです。

更年期の心の変化は?

思春期も成熟期に向かうホルモン環境の大きなうねりを受けて、心と身体の発育の不一致に苦しんだ時期でしたが、その先には成熟という希望がありました。一方、更年期も同様に大きなホルモン環境の変化を受けているのですが、その先にあるのは老化という漠然とした不安感です。

仕事中心で、老け込んだ自分に関心を示さない夫へのいらだち、一生懸命育てた子供達が、就職、結婚などで去っていく寂しさとショック 、もしキャリアウーマンとして社会的地位を得ても体力・気力不足を感じる健康不安など、精神的に非常に複雑な心理状態に陥る時期です。そのため、不安神経症やうつ状態、さらに身体的表現の不定愁訴がさらに強くなる人が多くなります。

更年期の薬物療法

1.ホルモン補充療法(HRT)

更年期障害の原因の中心となっている「エストロゲン不足」を何らかの形で補うのが最も効果的です。方法として、注射・飲み薬・貼り薬(パッチ剤)・塗り薬(ジェル剤)があります。更年期障害の改善のためだけであれば「エストロゲン」を補うだけでいいのですが、子宮がある状態でエストロゲンのみを補い続けると、子宮内膜が反応し、不正出血や、内膜増殖症、子宮体がんのリスクが高くなるという問題があります。そのため子宮のある方にホルモン補充療法を行う時は、エストロゲンと一緒に「プロゲステロン」の飲み薬やパッチ剤を組み合わせて投与し、定期的に消退出血(月経様出血)を起こすことをお薦めします。また、子宮がん検診・乳がん検診・卵巣チェック・人間ドックを年に1度は受けるようにしましょう。

2.漢方薬

ホルモン補充療法を好まない、またそれほど症状が強くない場合には漢方が用いられます。更年期障害には三つの基本の処方があり、「当帰芍薬散」は冷えがちで虚弱な人向き。「加味逍遙(しょうよう)散」は不安が強く落ち込みがちな方、「桂枝茯苓丸」は体力はあるが頭痛や肩こりが強い方に効果があるとされています。

3.向精神薬

精神的不調が強い時には、向精神薬も有効です。特に不眠が続くと、より思考が悲観的になり、悪循環となり「うつ状態」に陥ります。辛い時は、ぐっすり眠ることが大切です。不眠の種類により睡眠剤を変更し、不安感やイライラが強い時は抗不安剤を、さらに自律神経調整剤や抗うつ薬を用いることがあります。

更年期を乗り越える心の持ち方は?

多くの生物・動物たちの親は、最高の時期(性成熟期・発情期)に自分たちの子孫を誕生させた後、役割を終えたとして死んでいきます。人間も同様で、昔は子どもを育て、閉経時期に死ぬように、「人生50年」と定められていました。しかし、科学が発達し、人の平均寿命はどんどん長くなり、現在世界の女性の平均寿命は71才(日本:86才、ジンバブエ50才)に達しました。閉経後、さらに20年以上女性として生き抜く必要が生じたのです。この更年期という期間は人だけが経験する、人のみに与えられた期間といえます。

そうであれば、人としての生き方をゆっくりと楽しみながら、おおらかに生きるチャンスの期間として捉えてみてはいかがでしょう。

あなたは、まじめで几帳面で、ご主人と子供さんのために成熟期の人生を「しゃにむに」過ごしてきたのではないですか? 時には「頑張らなくてもいいんだ」とゆっくりとリラックス(副交感神経優位)する余裕を持ってください。それだけでも更年期の症状が軽くなることがあります。更年期の症状が落ち着くまで、少し人生のペースダウンをしてみてはいかがでしょう。

無理のない程度に毎日ゆっくり歩く有酸素運動は効果的です。肩こりやひざの痛み、便秘や動悸、息切れなどの症状の改善や肥満、骨粗鬆症の予防だけでなく、抑うつ気分や不安など、心理面への効果も認められます。 時には自分自身の世界(趣味の世界)を持つことはとても大切です。音楽演奏や書道、絵画、生け花などの創作的活動は副交感神経を刺激して、ストレスや疲労回復に効果的です。また無理のない程度のボランティアなどの社会参加で新しい自分の発見することも効果的かもしれません。

「ローマの休日」の美人女優オードリー・ヘップバーンの晩年の写真を見られたことがありますか。女優引退後、彼女は国連ユニセフの親善大使としてソマリアやスーダンの子供達を訪問しています。彼女は「私の顏はシワが増えましたが、このシワの数だけ優しさを知りました。若い時の自分より、今の自分の顏の方がずっと好きです」と言っています。 アンチエイジングと頑張るのでなく、おおらかに前向きでゆったりとしたエイジングケアで人生を楽しむ気持ちが大切です。

当院の更年期外来の特徴

  • 一人一人の患者さんの訴えを大切に、分析し、その人に最も適した更年期治療を提案します。
  • 常に更年期障害と紛らわしい内科疾患の鑑別を念頭に置き、アドバイスと、内科疾患が隠れていれば、信頼できる専門科へ紹介いたします。
  • 更年期特有の婦人科疾患(子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん・子宮筋腫・子宮内膜症・乳がんなど)は必ずチェックいたします。
  • 精神疾患が隠れている場合は、信頼できるメンタルクリニックにも紹介いたします。

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